「お父さんみたいな人と結婚したい~」と言える娘がうらやましい。
父のような男とだけはいっしょになりたくない、と物心ついたころから嫌悪感をもっていた。
かつて不倫の関係だった彼にわたしはなぜか嘘を吐いていた。
父親のことが大好きだと。
父親を超えるような男はいないと。
わたしはファザコンなのよと。
当時の彼には幼稚園児の娘がいた。
娘を「目の中に入れてしまう」と豪語していた男だった。
うらやましくてねたましかった。
その後、彼と別れた後なのに
ネットで使うハンドルネームにわたしは彼の娘の名をチョイスした。
その名でネッ友たちから呼ばれるうちに
現実や虚実なんてもうどうでもよくなっていた。
父が嫌い。
好きになりたかった。
尊敬できない。
尊敬したかった。
なのに今、「尊敬する人は?」と訊かれると「父」と応える嘘吐きなわたし。
矛盾と混沌でしんどい。